森と湖、そして川の国、スウェーデン!

社会と文化

スウェーデンの自然

スウェーデンという国に対するイメージというのは人それぞれの関心によっていろいろ違うのでしょうが、北欧(スカンジナビア)にある国として、スウエーデンは広大な原野や森、そして無数に点在する湖や川などの自然に恵まれた国というイメージが一般的ではないでしょうか。

確かに、スウェーデンは国土の約53%、つまり国土の半分以上が広大な森林地帯で覆われており、また数多くの湖や河川は国土の約9%を占めていますから、森や湖などの自然に恵まれていることに違いはありませんし、それらの自然は昔からスウェーデン人の生活に欠かせない大きな資源として重要な役割を果たしており、また大切にされてきました。

一方で、日本の森林は国土の68%を占めており、森林の国土に占める面積では、実は日本の方がスウェーデンよりももっと広いことになります。
また、日本の湖や川の割合は国土の約2.7%程度ですから、スウェーデンの約9%に比べると少ないとはいえ、実際には日本も自然に恵まれた国であると言えるでしょう

ともあれ、それでもスウェーデンが「森と湖の国」としてイメージされるのは、やはり日本とスウェーデンの国土や風土の違いや歴史的、文化的な特徴の違いというものがあるので、少しスウェーデンの森や湖、そして川についてご紹介したいと思います。

日本には山岳地帯が多く、関東平野などの広い平地はあるにせよ、どこに行っても山や山脈が見られ、その中にはたくさんの峡谷や渓流があるなど、地形が非常に複雑です。
一方、スウェーデンは比較的平坦な地形が広がっており、丘のような高台はどこにでもありますが、いわゆる「山」というものは、ノルウェーとの境界近くかあるいはラップランドのような北部に行かなければ見ることがありません。
そのため、スウェーデンの南部から中部にかけては、広大な森や原野、また無数の湖や大きな川が広がっており、まさに大自然そのものといえます。

ところで、日本とスウェーデンは国土の大きさや人口も違います。
スウェーデンの面積は日本よりやや広く、日本全土に北海道をもう一度足したくらいの大きさですが、人口は現在約1045万人と日本の12分の1程度、比較すると東京23区くらいの人口しかありません。
つまり、日本よりも大きい国土に、東京の人口に相当する数しか住んでいないわけです。

また、多くの都市や街など人が住む居住地はスウェーデン南部や中部に集中しているので、スウェーデン中部の北から北部にかけては、バルト海の沿岸地域を除く内陸部では、大森林や原野、そして無数の湖が延々と拡がっています。
都市部にしても、郊外の住宅地はそれぞれが森や湖の中に点々とあって、それらの地域を道路が繋いでいるといった地形であるというように、森や湖はどこにでもあるわけです。

このようにスウェーデンでは、地理的に森と湖そして河川は生活の基盤として重要な役割を果たしているために、昔から、森は木材や燃料の供給源として利用され、湖や川は水の供給や交通手段として活用されてきました。

バイキングの時代

昔のスウェーデンというとバイキング時代を考えずにはいられませんが、バイキングたちは森の木材を利用して、あの巧妙で有名なバイキング船を建造しました。

これらの船は川や湖を航行し、海洋を越えて交易や探検を行いました。
森は船の建材として重要な資源であり、川や湖は船の出航や降り立ちに利用されました。

また、森はバイキングたちにとって重要な狩猟場でした。
彼らは森の中で狩猟を行い、野生の動物から肉や毛皮を得て生活を維持し、川や湖も豊富な魚の生息地として利用され、漁獲は重要な食料源でした。
特に毛皮は北欧の名産物として重宝され、ヨーロッパ各地で交易を行いました。

さらに、バイキングたちは森と川を利用して防御の要素としても活用しました。
森林地帯や森の密集した樹木や川の水路は、バイキングたちにとって隠れる場所や逃げる手段として適しており好都合でした。
それ以来、バイキング時代が過ぎてからもスウェーデンは数世紀にわたって数多くの戦争や紛争に巻き込まれてきましたが、森林地帯や川は隠蔽や防御のためのカモフラージュとしても利用され、防衛戦略や軍事行動の一環として利用されてきました。

鉄の生産と、鉄工業

さて、スウェーデンのバイキン時代から近代にかけての発展の要として、鉄の生産と鉄工業の発展は、歴史的にも非常に重要な意味があります。
スウェーデンは鉄鉱石の豊富な地域ですが、バイキングは紀元前という古い時代から、主に中部のヴァーネルン湖地域やダーラナ地方で鉄を生産し、武器や道具、農具、船の部品など、日常生活や戦闘に必要な様々な鉄製品を製造していました。

その鉄製品は他の地域でも高い評価を受け交易や戦争においても重要な資源となり、バイキングの勢力拡大にも大きな影響があったわけですが、スウェーデンは豊富な鉄鉱石の鉱床を持っていたため、その後17世紀初頭には鉄鉱石の採掘と加工が重要な産業となり、18世紀に入ると国内外での需要が増えたことによって鉄の生産量はさらに拡大して、鉄工業はスウェーデンの主要な産業となりました。

さらに、近代になると産業革命によって機械化が進み生産性が向上するとともに、19世紀には鉄道建設や船舶建造などの大規模プロジェクトが行われ、スウェーデンの鉄工業は世界的な影響力を持つようになりました。
現代では、鉄工業はスウェーデンの重要な産業の一つであり、高品質なスウェーデン鋼やその他の鉄鋼製品の生産が行われています。

水力資源の利用と都市の発展

スウェーデン中部や北部などの内陸には多くの鉄鉱山があり、また製鉄所や工場は海岸から離れた場所に位置していることがありましたが、川や内陸水路を利用することで、鉄鉱石を海岸から内陸へ効率的に輸送することが可能でした。
そのため、川沿いや河口に位置する町や都市は、水上交通の要所となり交易の中心地として発展していったのです。

また、川沿いや河口には水力資源が豊富で、水力を利用して動力を得ることで製鉄所や工場の建設が行われ、その結果、例えばダーラ川のあるダーラナ地方や、ルンド川が流れるスウェーデン南部などは鉄工業や他の工業の集積地となり、労働者や技術者が集まり都市としても発展していきました。

スウェーデンの首都であり最大の都市であるストックホルムは、メーラレン湖がバルト海に達するところに位置し水運の便が良く、古くから交易や貿易の中心地として栄え、また工業の発展にも貢献し、現在も重要な工業都市であります。


            (1700年代のストックホルム)

またスウェーデン第2の都市イェーテボリはイェーテ川の河口にあり、ここも交通の要所として栄え、船舶工業や貿易が盛んに行われ、また川沿いの水力を利用して工業が発展し、重要な工業都市となりました。

ノルショーピングはメーラレン湖とバルト海に挟まれたノルショーピング川の河口に位置する都市で、この街も水運の便が良く、交易や貿易の拠点として栄えました。
また、鉄鉱石の輸送や鉄工業の集積地としても重要な役割を果たしました。

このようにスウェーデンのバルト海の沿岸部では、産業と河川を利用した輸送によって、スウェーデン最北部のルレオやウメオなどを含めいくつもの都市が発展してきました。
そのほかにも、例えばダーラナ地方や古くからバイキングの魂の故郷としても有名なウプサラなど、内陸にありながらも豊かな湖と川とによって繋がって発展した都市がいくつもあります。

文化と環境

スウェーデンの湖や森と川はこのように歴史的にも産業的にも重要な意味を持っていますが、この自然環境はスウェーデンの伝統や民俗の一部となっており、多くの祭りや行事が森や川に関連しているなど文化的にも大きな意味を持ち、大切に育まれてきました。

スウェーデンの民話や伝承には、森や川にまつわる物語が多く伝えられていますし、また例えば毎年4月30日に行われるスウェーデンの春の祭り「ヴァルボリ Valborg」や、夏のお祭りである夏至祭りでは、人々が森や湖畔に集まり、花や葉を使った祭りを行います。

バイキング時代にはオーデンやトール、フレイなどの神の物語である「北欧神話」が信じられており、今にも伝わる多くの逸話や伝説が語り継がれていますが、そこではたくさんの森の神話や精霊たちと人間の交流が描かれています。
このように、森や湖、川などの自然環境はスウェーデンの文化的なアイデンティティの一部になっていて、文学や詩、絵画などの芸術作品にも多く登場します。

 

水の持続可能な資源管理

ところで、近年スウェーデンは国連を中心に、水の資源管理や持続可能な開発の推進に向けて国際社会と連携して、地球上での水の問題に取り組んでいるのをご存知でしょうか?

スウェーデンは水資源の豊富な国でありながら、持続可能な資源管理と水の保全に重点を置いています。
なぜなら、水は人類と人間社会において貴重な資源であり、将来の世代にも持続可能に提供される必要があるからです。
そのためスウェーデンは、水の資源としての重要性を国際的に訴えることで、世界各国が水の管理や保護に対する意識を高め、地球上の共同の課題に対処できる環境を作ろうとしています。

また、森林は二酸化炭素の吸収や酸素の放出などの役割を果たし、気候変動の緩和に貢献しているほかにも、森と川は多様な生物の生息地であり、生態系の保護とバイオダイバーシティの維持に不可欠です。

このように、国内だけでなく世界に向けて地球の環境問題に積極的に働きかけているスウェーデンの姿勢は、まさに森と湖、そして川の国であるからこそ、歴史的、文化的な体験に基づいて、自然というものへの敬意と意識を伝えようとしているのではないでしょうか…。

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