税金の話

北欧情報

こんにちは、このサイトでスウェーデンからの情報を紹介している大瀧です。
いつも福祉や医療のトピックが多いんですが、スウェーデンの生活や「スウェーデンあれこれ…」のような話題も取り上げてみたいと思います。

今回は、税金の話です…。

日本にいた時に、「スウェーデンって…税金が高いんじゃないですか?」ということをよく聞かれました。

特に、消費税のことが話題となるたびに、スウェーデンでは消費税が25%ってことで、日本と比較して話題になることが多かったんですけど、僕がよく聞かれたのは、「スウェーデン人って、文句を言わないの?」ということでしたね。

僕はそう聞かれると、大概の時は、「あまり文句を言わないですね…」と答えるんですが、みなさん、「へ〜?」と、怪訝な顔をされます。

まぁ、僕は日本人なので、スウェーデン人に聞く方が本当のことが聞けると思ってスウェーデン人に聞くと…

「いや、福祉を支えるために必要だ」とか、「得るものが大きいから、当たり前」とか言うのが普通で…中には、「もっと払っても良いと思ってる」なんて言う人もいるので、余計不思議に思われるようです。

もっとも、

これはスウェーデン人が外国人に聞かれた時に平均的に答えることなんですが、こちらで税金のことが話題になると…

特に若い世代は、今はEU間では自由に就業が出来るので、税金の安い国で働きたいと思っている人が多い…ということも聞くし、最近は移民や難民の問題も話題になって、「税金の多くが、移民政策に使われている」という不満も多くなって来ているのも確かです。

でも、これは税金が高過ぎるということではなく、むしろ税金の使われ方の問題ですし、そもそも、一般の市民って、「税金を払い過ぎ」って実感があまりないと思いますよ。

なぜって、給与をもらう時はもう既に税金引かれているし、消費税だって、ものの値段に含まれているから、「消費税がいくら…」なんてあまり考えない。

「商品の値段は、それ!」です。

税金として僕らが実際に気にするのは、一般的には所得税と消費税だけかな…。

もちろん、メッチャ高い酒やタバコ税とか、車とか、海外からの贅沢品とか…それぞれ生活必需品以外に税金がかかるというのはありますけど、普通はそんなもんです。

なので、税金自体は怖くはないけど、でも、収入があるほど税金も高くなるので、収入の申告には、みんな気をつけています。この税務署のロゴがついた郵便がくると、一応は「ギクッ!」としますからね。

税金の額はというと…

所得税として払うのは、各自治体に平均して約30%、
消費税は、普通は25%。

所得税は軽減税率が導入されているので、一般的には25%ですけど、

食料品や宿泊費は12%、
公共交通、書籍・新聞、コンサートやスポーツのチケットなどは6%。
というように、全部が25%じゃなく、生活の結構多い部分では、実際にはそんなにかからない。

…と、まぁこう説明しても、「実感としてはどうなのよ?」というのがよく見えないとは思いますが…

ある時日本で、当時の在日本スウェーデン大使に…

「オターキさん、あなた…日本で、スウェーデンの税金のことどういう風に説明してるんですか?」って聞かれたことあります。

大使曰く、「日本で税金のことよく聞かれるけど、いろいろ説明しても、中々わかってもらえない」とこぼしていました。

で、僕が答えた「説明の仕方」ですけど…

例えば…僕の給料が1万円とします。

雇用主は、僕に1万円の給料出すのに対して、45%の雇用税を国に収める。
これが失業保険とか健康保険とかに使われる。
もちろん国防費とか他の国費の支出も含めて…です。

つまり、僕に1万円の給料を支払うために雇用主は4500円を国に支払っているわけです。

僕の給料の1万円からは、自治体への住民税として3000円が引かれて、それは、福祉サービスに使われます。
それで、僕には、1万円から3000円引かれた7000円が手取りとして残ります。

ということは、僕の給料1万円に対して…

雇用主が国に支払う4500円と、僕の住民税として引かれた3000円の合計7500円が税金となっていて、僕は、その手取り7000円をもらって、25%の消費税を払って暮らしている。

…という具合です。

要するに、僕が1万円の給料をもらうことで、実に7500円の税金が国と自治体に行っているというわけですよね。

1万円の給料で税金が7500円というと、そりゃ〜とてつもなく高い税金に聞こえますよ。
加えて、生活していく上で消費税が25%…と考えると…一体税率としては何パーセントになるか計算も難しいんですけど…

「うわ〜、ほとんどが税金じゃん!」と、日本の人が思うのもわかりますね…。

でも、僕が生活する上での実感としては、

雇用主が払う4500円というのは、もともと雇い主が払うものだし、住民税だって初めから引かれているわけですから、実感的には、1万円の給料で、手取りが7000円としか思えません。

そう考えると、日本で給料を1万円もらって手取りが7000円というのは、税金と社会保険料を引かれた手取りとしては、案外普通なんじゃないかな…という感じです。

僕が「高い給料が欲しい」と思う時は、給料の1万円もそうかもしれませんが、むしろ手取りの7000円がもっと増えてくれないかな…ということだと思いますね。

つまり、考えるのは給料や手取りの額で、税金のことではないというか…。

それと…スウェデンでは、

・水道料は無料。

・教育費は大学まで含めてすべて無料。

・医療は18歳以下と85歳以上は無料。

・成人の診察料は自己負担で、年間で最大約1万3000円。

・薬品代が、年間2万5900円以上は無料。

なので、暮らしにそんなにお金がかからないし、家庭を持っても、教育費は無料ですから、高い税金を払っていることでの見返りもあります。


幼稚園


中学校


大学

大学は無料といっても、これは授業料で、書物なんかは自己負担ですけど、入学金なんてものはありません。
それに、ほとんどの学生は学生協同組合から奨学金をもらって、学生寮やアパートで暮らしています。

もっとも、学生協同組合からもらう奨学金は、後でその多くを自分で働いて返済するという形にはなっています。

なので、日本のように「親のスネかじり」とか、親からの「仕送り」なんて皆無に近い。

子どもが18歳過ぎると大人として扱われるので、親も経済援助はしないし、学生も、生活に困るといろんな補助金がもらえるので、「親のスネかじる」必要もないですから…

スウェーデン人が税金に対してあまり文句を言わない理由の一つに、多くの人が「政府(国)を信用している」、というのがあると思います。

文句を言いたい人は、そりゃいるでしょうが、そんな時に有効なのは、やっぱり選挙でしょう。

スウェーデンの選挙の投票率は80%以上ですし、若い世代ほど投票率も高い傾向にあるので、「文句」は、当然選挙に表れますから、いろんな政党も、当然世論を意識した政策を出していかなきゃなりません。

それでも、税金が高いというので減税を主張する政党は少ないし、仮にそういう政党があったとしても、「じゃあ、福祉はどうするのか?」ということがあるので、あまり支持は得られないでしょう。

ただ、その高い税金をどう分配するのかということについての議論は、盛んに行われます。

最近の選挙の後で、長らく首相が決まらないという状況が続きましたけど、これも、スウェーデンには、いろんな意見があって、それぞれ同じような数の支持者があるからということでしょうね。

でも、やっぱり「高税高福祉」ってことでは、右も左も、基本的には同じだと思います。
要は、税金の使い道の考え方の問題だと思います。

ということで…

はい、「高税だけど、税金が高いから減らすとは考えない」という話でした。